2017年10月14日土曜日

堀江敏幸さん朝井リョウさん 師弟トークショー - 岐阜新聞

写真:堀江敏幸さん×朝井リョウさん 師弟トークショー
岐阜県の土地柄からくる「中間のまなざし」などについて語り合う堀江敏幸さん(左)と朝井リョウさん=岐阜市宇佐、県図書館

◆県出身作家の特徴語る

 岐阜県図書館(岐阜市宇佐)で開催中の企画展のオープニングイベントとして、芥川賞作家の堀江敏幸さん(53)=多治見市出身=、直木賞作家の朝井リョウさん(28)=不破郡垂井町出身=がトークショーに臨んだ。朝井さんが大学時代、堀江さんのゼミ生だった師弟関係の2人だが、トークショーは初めてという。岐阜県人の特徴としての「中間のまなざし」や、小説をけん引する文章の大切さについて、熱く語り合った。

 堀江ゼミで学んだ経緯について、朝井さんは「(志望したのは)必然ですね。センター試験の過去問に堀江先生の『スタンス・ドット』が出題されていて、時間との勝負なのにじっくり読んでしまった。戦慄(せんりつ)という言葉が自分が知っていた感情ではない部分で使われていたのが忘れられなくて。早稲田大の教授をされていることを知り、ここに入ればこの人がいるのだと思った」と説明。堀江さんは「朝井君のように読んでくれるのは少数派で、分かりにくい文章に苦労したと学生に恨まれた」と秘話を披露した。

 晴れて教え子となった朝井さんは、堀江さんの指導について「褒めて伸ばしてくださるのですが、印象深いのは、同期生が小説に写真を付けたところ『いらないのでは』と言われたこと。小説で一番大切なのは文章自体で、文章が大きなエンジンを積んでいないと、外付けのエンジンではわずかしか進まない。自分が7年ぐらい小説家を続けてきて、ずっしりと分かってきた教えですね。いま文章を書く修業中だという気がしています。先生の『なずな』という作品が好きなのですが、本当に文章という舟に乗ってる感じがする」

 朝井さんが直木賞候補になった際には、同じ建物内で芥川賞の選考をしていた堀江さんから連絡をもらうなど、温かな交流が続いている。朝井さんが会社勤めをしながら小説を書いている時期には「なぜか朝井君への仕事の依頼が僕に入ってきて、3、4年ぐらい彼の秘書をやりました。勝手に断ったりしまして」と笑いを誘った。

 県出身者の特徴について問われると、堀江さんは「多治見は低い山が四方にあり、遠くを見ることがない。中景で、よくいえば柔軟性があり、悪くいえば中途半端。そんな感じがとても好きで。中くらいのところに視点がある所で育ったんだなと、ありがたいことだと振り返っています」「(活躍する県出身作家が多い)理由は分からないけれども、先輩たちの名前を見ると励まされるというのはある。坪内逍遥、森田草平、小島信夫先生もそう。篠田一士さんとか平野謙さんとか、評論家が結構多く、外国文学をする人もいて、一つの視点だけでなく、中間のまなざしで物事が見られる。良くいえばバランスがとれて、悪くいえば頑固。小島さんなんかは本当に頑固一徹で自分の道を曲げない、それでいて人に優しい。岐阜県の人と接していると、ああ、小島さん的なものがあると何となく感じられる。今回展示されている作家たちも、上も下も右も左も見られる人が幅広い社会派の小説やミステリー、若者の小説を書いていたりする。土地柄もあるんじゃないですかね」

 次回作について、朝井さんは「現在岐阜を舞台にバレーボールの長編小説を書いていて、来年にうまいこと出せたらいいなと思っている。いまは止まっているのですが」と生みの苦しみをにじませた。

 堀江さんは「次回作は何も計画がないんですよ、いま書いているので精いっぱいで。日本経済新聞に『傍らにいた人』というコラムを連載している。当面は続く予定なので、頑張って書きたい」と話した。

   ◇

 企画展「小説家の素顔に迫る」(県図書館、ぎふチャン主催)は12月27日まで、県図書館で開催。2人に加え池井戸潤、冲方丁(うぶかたとう)、中村航、米澤穂信の計6人の作家に関連する443点を展示。入場無料。

Let's block ads!(Why?)

via トークショー - Google News http://ift.tt/2gaiJY1

Let's block ads! (Why?)

0 件のコメント:

コメントを投稿